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【ノースフェイス】【ヘリーハンセン】コーティング劣化事例

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おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 大友 眞吾です。

今回は最近とても多くなってきた加工の劣化のついて説明させて頂きます。

服の作られ方など購入する際に知っておきたいことですが、販売店で説明されることもなければ
クリーニング店でも説明をするお店は少ないようです。

最近は個人店も減少していて、チェーン店ではパートさんが受付しているため説明スキルまで持っていないのが現状です。

ゆうゆうでは受付時、加工されている製品の場合、劣化の説明をさせていただいています。
中でもダウン製品は必ず加工がされていますので、初めてご来店のお客様には最初に説明をさせてもらっています。

ハイブランド品の場合、加工の寿命の説明をするとかなりショックを受けるお客様もいらっしゃいます。

コーティング、ボンディング加工は冬物のブルゾンやコートなど見えない部分にされています。

最近だとこれらの加工がされていない服を選ぶ方が難しいというくらいされている加工です。

薄くて軽く暖かい、着やすくて機能性の高い服を作ることを可能にしている加工です。

今回、人気のあるノースフェイス、ヘリーハンセンのブルゾンを検品させて頂いた際、残念ながら2着とも寿命がきていたので洗えないことをご説明し返品させてもらいました。

しまう前は大丈夫だったけど着ようと思ったら・・・
洗う前は大丈夫だったのに洗ってみたら・・・
クリーニングに出したらダメにされた・・・

こんなご相談も頂いていてきちんとした説明されていないことも多いようですので、寿命のご説明をさせて頂きます。

◆ノースフェイス・裏面コーティングブルゾンの劣化事例

トップ画像はノースフェイス薄手のナイロンブルゾンです。

表生地はナイロン、裏面を見るとメッシュの裏地がつけられていますが、メッシュの下を見て頂くと白い面が見えます。

裏地はメッシュつけられているだけで、表面と裏面の色が違っています。

一枚の生地なのに表裏が違っているってことは、表面と裏面を作っている(色づけている)材料が違うってことです。


◇裏面コーティングの劣化、ひび割れ

メッシュの間から見える白い部分の拡大(100~200倍)画像です。

ひび割れているのが見えますね。
黄色っぽい繊維状に見えているのがこのブルゾンを作っている素材です。

今回のブルゾンはこの素材の上に表面は薄緑色の顔料、裏面をコーティングした素材で作っていることがわかります。

生地が薄くてもこのコーティングをすることで通風性を遮断し保温性を高めることで軽くて暖かく機能性の良い服を作っています。

弾力もあり柔らかいのですが、時間とともに劣化して硬化しこんな状態でひび割れてきたりします。

これは使っていても使わず大事にしまっておいても時間とともに寿命がきてしまいます。

この現象を「経時劣化」と言います。

一番右画像見ると繊維も割れているのが見えると思います。
このコーティングは接着剤と同じようなモノなので、繊維に浸透して固まると、コーティングがひび割れるのと同時に繊維も同じように割れてしまいます。

服に付いてしまった瞬間接着剤などを無理して取ろうとすると、固まった接着剤と一緒にパリッと割れてしまい、接着剤を取ると繊維まで切れている状態になります。

接着剤と一緒に繊維が割れてしまっている事例はここをクリック!

ノースフェイスはダウンも含め人気のあるブランドなのでいろんなご相談をお受けしてご説明しています。

こうした加工は必ず寿命がきてしまうもので、洗った事がきっかけで劣化が見えるようになりますが、洗い方が原因ではなく、すでに経時劣化寿命がきていたという事になります。

もう一枚ご紹介しますね。


◆ヘリーハンセン裏面コーティングブルゾンの劣化事例

【HH】ロゴで有名なヘリーハンセンです。
先にご紹介したノースフェイスとほぼ同じ作りになっています。
ノースフェイスと同じ価格帯になるのかな。

裏面もメッシュがつけられていますが、こちらは粉状の白いモノが付いているのがわかりますね。

説明的にはノースフェイスと同じ状態で、白いのはコーティング剤が劣化して粉状にボロボロとはがれて付いたもの。

例えばガムテープを貼り付けたまま長い時間置いてあり、剥がすとペタペタ糊残りしますね。
これはガムテープの接着剤が空気中の水分で溶け出してしまった状態で加水分解と言います。

ガムテープを剥がすと水分で溶け出した接着剤が乾燥し、爪でコリコリするとぽろぽろはがれてきます。

服でもこの「加水分解」と「経時劣化」は同じように起こります。


◇粉状に出てくる劣化したコーティング剤(樹脂)

ノースフェイスのコーティングと同じように見えますが、右のアップ画像を見るとひび割れだけではなくさらに細かく粉砕されているのが見えています。

大きくひび割れただけの状態ならまだ貼りついていますが、粉状に細かく砕けるとボロボロとはがれてきます。

似たような現象がよく起きるのがカーペット。
薄く柔らかいと敷いて使うとたるみが出たりするため新品時はたるみが出てこないようハリもあり硬くなっています。

これも接着剤(樹脂)のようなもので固めていますが、画像のひび割れた状態で劣化が始まっている状態のものが水洗いで揉まれ、タンブル乾燥で揉まれるとさらに細かく砕け、粉状のカスが出てきます。

一気に全部剥がれるのではなく少しずつ砕けた部分からはがれてくるため、洗っても掃除機をかけても延々と粉状のものが出てくる状態になります。

経験ある方結構多いのでは?

画像は100~200倍程度に拡大しているのではっきり見えていますが肉眼ではよくわからないと思います。

実際はこんな状態になっています。

当店では劣化する素材が使われている場合、ご説明させてもらっていますが、当店で劣化による不具合が起きてしまった場合、どんなお店で洗ったとしても起きてしまいます。

◆劣化する素材 まとめ

ボンディング、コーティングなどの加工がされている服はたくさんありますが樹脂が使われています。
この加工のおかげでとても軽くて着やすく、薄くても保温性のある服を作ることができます。

そのほか、本来なら伸縮しない素材を伸縮させるように作られているストレッチ素材もゴムのような樹脂が使われています。

樹脂は空気中の水分で溶け出す加水分解、パリパリに硬化してひび割れたりはがれたりする劣化が必ず起きてきます。

起きてしまったら素材の寿命となりますが、どの程度で寿命が来るかは作る材料により変わります。

日本のように高温多湿の国は湿気が多いため加水分解現象が起きやすいため、湿気に溶け出さないように作ることで寿命が長くなります。

乾燥した地域(国)で作られるモノは、乾燥に強い材料を使って作る事で寿命は長くなります。

気候が真逆な地域に、それぞれの気候に特化して作ったものを輸入してしまうと、寿命が短くなってしまうんです。

インポート製品を持ってこられたときにする樹脂の説明です。

だからこうした加工品がいいとか悪いではなく、クリーニング店としての説明義務を果たし、不具合が出ないようにどうやって洗っていくかを考えていくのが私たちプロの務めです。

溶け出してきたからと上から蓋をするように加工した場合、べたつきは止まりますが、下地の溶け出しは進んでいきます。湿気は裏からも表からも侵入していくからです。

傷んでいる下地の上に加工しても一時しのぎにしかならず、裏側から浸透するも洗剤や溶剤により、一度洗うだけでだめになったりすることもあります。

中には汚れすら落とさず汚れの上から色乗せ隠蔽されたといった事例もご相談もらったりしています。

加水分解する塗料を塗られ汚れを取らず塗り絵のように隠ぺいしたため、広範囲に溶け出してしまった状態。

ペタペタに溶けだした襟の修復~他店で修復した襟の溶けだし~

だから、当店では加水分解でも劣化によるひび割れでも補修はお受けしていません。

劣化のご説明をさせて頂き、できる限り長く愛用できるお手入れをさせて頂くのが当店の仕事です。

裏側コーティングが剥がれてきた場合、裏地が付いていなければガムテープ貼り付けて剥がすと劣化部分を剥がすことができます。

コーティング以外にも、バックやブーツの内側や衣類のポケット周りとか服の前立てなどが革のように見えるように巻かれたりしているポリウレタンも経時劣化で剥がれてくるので、剥がれてきたら同じようにガムテープで剥がすことができます。

剥がすと下地の基布が出てきますが、そのまま使ってもおかしくない状態になることが多いです。

下手に何かで塗って直そうとしたりすると剥がれた部分と剥がれていない部分の段差(凹凸)が出るため綺麗に直らないし、また同じように剥がれてきたりします。

劣化の上から何かを塗りなおしても塗った下の劣化部分から剥がれてきます。

劣化部分を剥がしとってしまえば劣化の心配なく使う事ができますね。

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