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ダウンに付いたペンキ(塗料)のしみ抜き~どこへ相談しても断られる理由~

塗料の付着 しみ抜き参考価格

今回のダウンブルゾン     20000円(税込み22000円)

付着してからの経過時間、状態、取れ具合により金額は変わります。

ダウンは多重構造になっています。
全てのダウン製品はボンディング加工がされており、しみ抜きをする際、ボンディングの加工剤が溶けてしまったりする可能性があります。

詳しくはご下記のご説明を参考にしてください。

◆樹脂系のシミとは

おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 大友眞吾です。

今回はダウンに大量につけてしまった塗料のシミです。
当店では樹脂系のシミと読んでいますが、文字通り、樹脂が使われているモノのシミの事です。

接着剤のシミ、ペンキなど塗料のシミ、絵の具も樹脂が入っていますので樹脂系のシミとなります。
接着剤は単純に貼り付けるための樹脂ですが、そこに顔料という色が付いた粒子を入れると接着剤で色が貼り付きます。

色を接着剤で貼り付けているのがペンキであり絵の具です。
ポリウレタン、塩化ビニルという樹脂に顔料を入れ基布に貼り付けたモノが人工皮革になります。
マッキントッシュのゴム引きコートも樹脂加工製品で昔は本当にゴムが使われていたようですが今はポリウレタン樹脂が使われています。

ボンディング加工とは薄い生地でも冷たい外気を遮断し保温性を高めるための加工で、表生地の裏側にもう一枚樹脂で生地を貼り付けています。
表生地にされているコーティングも樹脂が使われていて、簡単に言えば繊維の目を接着剤でふさいでいるような加工になります。

ほぼ全てのダウン製品にこのボンディング加工がされていますが、軽くて暖かいコートなど冬物衣料にはかなりの確率でボンディング、コーティング加工がされています。
クリーニング賠償基準法で定めている平均使用年数は2年とされている加工となりますが、使われる材料により寿命はかなり変わってきます。

空気中の水分により接着剤が溶け出す現象を加水分解と言います。
ガムテープとかセロテープを長い時間貼り付けてあると、剥がした時ベタベタと糊残りしますが、これが接着剤が空気中の水分で溶け出した加水分解という現象になります。

表生地が薄いナイロン生地とかポリエステル生地が使われていると、溶け出した樹脂が表生地に染み出し油のようなシミを作ります。

さらに劣化が進むと水分がなくなりパリパリになります。
べたつきが出ていたセロテープなどそのまま放置しておくと、爪で軽くこするだけでボロボロと剥がれてきます。

加工品は遅かれ早かれこれら寿命が必ず来る素材となります。

今回は樹脂加工がされている服に付けてしまった樹脂系のシミを取るわけですが・・・

感の良い方はわかったんじゃないかな?って思いますが、塗料、加工剤とも樹脂が使われているため簡単にはいかないんです。

塗料を取るために加工まで取れてしまう可能性があるからです。

学生服に付いた接着剤の染み抜き・無料しみ抜きパスポートの記事はここをクリック!

◆ダウンに付いた塗料のしみ抜きが難しい理由

これはこのダウンの品質表示です。

一番下の洗い指定を見ると左から

水温30度以下、アンダーバーが2本ありますのでとてもソフトな水洗い指定
塩素系、酸素系とも使用不可
タンブル乾燥禁止
乾燥は日陰で平干し
アイロンはかけられない

右2つはクリーニング店用

ドライクリーニングは不可
ウェットクリーニングは一番ソフトな機械力で

となっています。

この表示から、ドライクリーニングに✖がつけられていますので、加工剤がドライクリーニングではがれる可能性があるって事がわかります。

ドライクリーニングは石油系の溶剤で洗うクリーニングになるため、溶剤で溶ける樹脂が使われていると加工が取れてしまうんです。

石油系ドライ溶剤はとてもソフトな洗浄溶剤なのでペンキを除去できるような染み抜き剤を使うと簡単に取れてしまう可能性があります。

ドライクリーニングに✖が付いていなければ溶剤に対してある程度耐久度があるって判断ができる訳です。

瞬間接着剤のシミ抜き~接着剤と一緒に割れ繊維が切れている状態~

裏側 アルミ素材

遠赤外線効果で発熱する構造かな・・・?
アルミ素材がつけられています。

色々な機能を備えているダウンです。

表面だけではなく内側にも塗料が見えていますが・・・
かなり広範囲に飛び散って付いています。

今回は最初の説明で、これら一通り説明をさせて頂きました。
お客様もご説明にすごく納得され、お受けする場合はダメになっても保証は出来ないという事もご説明させてもらっています。

成功報酬制で、ダメになってしまった場合は代金は頂きませんが一切の保証が出来ません。

このままでは着られないし、どこへもっていっても受けてもらえないと思うから、という事でお受けしています。

水洗いしながら、水溶性リムーバーで簡単に取れてくれたらいいあぁ・・・

でもそうは甘くありませんでした・・・

◆塗料のしみ抜き 仕上がり

水洗いしながら取れたらすぐにしみ抜き剤と一緒に洗い流す方法・・・では全く落ちることは無く・・・

プランCまで試し、最終的には1か所ずつ溶かして流して落としたら加工剤が溶け出す前に即乾燥・・・
という手順で一つずつ除去していきました。

付けた当日に持って来ていただけましたので見た目では加工剤に影響を出すことなく綺麗に除去できています。

シミ自体は100%取ることが出来ています。

レーシングスーツ・スポンサーワッペンをはがしたあとの接着剤除去

◆ダウンに付けた塗料のしみ抜き まとめ

2022年9月にズミさんがロケに来られた「ただいま!テレビ」の取材時、冒頭で健也が落とせないシミの説明で、シミを取ろうとして生地まで溶けてしまうような場合は取れない、と言っていました。

今回の事例がまさにその説明通りの事例です。

樹脂が加工で使われている服に樹脂のシミを付け、樹脂を取る薬剤使ったらどちらも取れてしまう・・・

使う薬剤を選び、溶け出すまでの時間内に処理を終える。

見えない部分を手探りでやっていくしみ抜きです。

やってみないと結果がわからないしみ抜きってとても多いんです。

こんなシミ抜きの場合、ほとんどのお店で断られてしまうしみ抜きになります。

当店もやってみないとわからないから・・・成功報酬なんです。

保証はできない代わりにできなければ代金は頂かない。

当店が技術を身に着けることが出来た理由も、お客様がダメになるのを覚悟して依頼をしてくれているからです。





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