おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 大友 眞吾です。 クリーニングの技術って染み抜きができれば技術のあるお店と言われます。 シミって落ちないと目で見てすぐわかるし、落ちないことも多いからです。 でも一番難しいのは染み抜きではなく仕上げなんです。 例えばスーツって機械仕上げにより型崩れが出ていることが多いのですが、着られる状態ならお客様も気が付かないことが多いんです。 それでも、気が付くというか、直らないと着たくないって状態もありますね。 今回は修復仕上げのご紹介です^^
こちらは紳士ズボンです。 最近はストレッチタイプ(伸縮するタイプ)がたくさんあります。 本来なら伸縮しない素材でも伸縮するように作ることが出来るようになったからです。 画像のズボンはストレッチタイプですが膝が伸びてしまっています。 まぁ、これはストレッチタイプじゃなくても起きてしまう伸びなのですがストレッチタイプはポッコリって感じで伸びてしまいます。 よく伸びてしまう現象はTシャツとかポロシャツを洗って干したときに出る肩。 ポッコリとハンガーの形状で伸びてしまいますね。 これらの伸びは修復仕上げで直すことができます。
伸びた部分を「いせ込み」という方法で生地の織を縮めながら元の状態に直していきます。
縮んだニットを大きく!伸びたニットを小さく!の記事はここをクリック
これ、直さないと履いた時に真っすぐにならないので伸びた部分だけ歪んだ状態になってしまいます。
膝のこのポッコリとした状態を直してほしいってご相談は結構あったりします。
ただし、直せない状態になってしまっていることもあります。
品質表示の組成を見てみると、ポリウレタンが3とか5%って書かれているストレッチタイプの服って結構あります。
このポリウレタンはゴムのようなモノで、このゴムに伸縮しない糸を巻いて伸縮性を出していたり、ポリエステルなどは溶かした状態の中にこのゴム樹脂を混ぜ込むことで伸縮性を持たせたりなどされています。
このポリウレタン(ゴム樹脂)は劣化すると伸縮性や弾力がなくなるんです。
輪ゴムを思い浮かべてください。
古くなった輪ゴム引っ張るとブチっと切れたり、引っ張ると弾力がなくなっていて伸びっぱなしになったりします。
同じ現象が起きてしまうと伸縮性がなくなり戻らなくなってしまうんです。
だから、直せる状態と直せない状態があり、直せない状態の場合は素材自体に寿命がきてしまったということになります。
この場合は買い替え時ってことになりますね。
こちらはニットワンピースです。 家庭で手洗いしたところ型崩れしてしまったというご相談です。 繊維は水分を含むと膨張したり撚ってある(ねじってある)撚りが戻ったり、水分を含んで膨張した繊維が乾いても元の状態に戻り切らずに変化するなどの変化が起こりやすくなります。 スチームなどで蒸して伸ばした状態で仕上げられている服の場合、水洗いすると元の形状に戻ろうとするのでいきなり縮んだり型崩れを起こしたりします。 リフォーム修理をする場合でも無理やり生地を伸ばして直したりすれば洗うと元の状態に戻るため変なしわができたりゆがんだりします。生地の自然な状態で直していく、仕上げていかないと洗った後に大きく不具合が出てしまいます。 ドライクリーニングというのは石油系の溶剤で洗うクリーニング方法なので繊維が溶剤を含んでも膨張したりなどの変化がほとんど出ない洗い方法になるため、水洗いが難しい素材でも変化を出すことなく洗うことができるんです。 クリーニング店を利用されている方はとても多いと思いますが、ドライクリーニングのことって知らない方とても多いですね。 まだまだ色々とありますが、今回は型崩れ修復についてご紹介していきます。
平らになりよく置いた状態です。 裾はこんな感じ。 前の全体画像を見ていただくと、前立ての織が変わっている部分が長くなっているのがわかります。 洗う前の状態のサイズがわかりませんので、お客様からどのくらい縮んだかなどお聞きし直していきます。 今回の場合だと、それほど大きく縮みは出ていないとのことでした。 おそらく前立ての一番長くなっている部分はほぼ縮みは出ておらず、その周りの生地が縮んでいる状態。 今回の修復は前立ての長さに合わせて縮んでいる部分を幅出し調整しながら型崩れを直していきました。 肩、袖丈など全体のバランスから見てほぼ洗う前の状態に戻せたと思います。 水洗いしてから崩れ↓スーツの修復仕上げ事例はここをクリック! 機械仕上げではできないのが修復仕上げ。 全体を見て縮み具合をある程度予測し、バランスよく幅出ししながら形を整えていきます。 この修復仕上げがクリーニングの仕事の中で一番難しく、教われば誰でも出来るという技術ではないんです。 一点ずつの手作業、アイロン一つで直していきます。 簡単なモノなら普通にクリーニング工程内で直していきますが、型崩れがひどいと手間がとてもかかるため、どの程度手間がかかるかで金額が変わってきます。 綿製品の場合、目詰め処理されていないと3~5%程度縮むのですが、当たり前ですが丈の長さが長いほど縮む長さは大きくなります。 例えば総丈が70センチ程度のジャケットなら3%縮んでも2センチ程度です。 裏地がなければ着られるレベルかな。 でもワンピースやコートなど総丈が150センチ程度あったとすると4.5センチ~5センチ程度縮むことになります。 わずかな縮みでも丈が長くなるほど大きく型崩れが出てしまいますので、水洗いする場合は念頭に置いて洗ってください。