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フェンディーセーター・丈の伸び、袖の丈出し修復~修復すると見えてきたデザイン~

修正する巾、難易度により金額が変わりますので基本お見積りとなります。

ウール、獣毛のニット製品は手洗い程度で出る縮み、使っているうちに出てくる目詰まりによる縮み程度であればクリーニング代金内で修復できるものもあります。

基本巾だし(大きくする、伸ばす)修正よりいせ込み(縮める)修正のほうが手間もかかり難易度も高くなるため金額は高くなります。

素材、状態により修復できないモノもあります。

持ち込みのお客様は直接持ってきて頂ければ見させていただきますが、遠保から宅配でご利用のお客様の場合、必ず一度事前にご相談後、お送りくださるようお願いします。

今回のフェンディー

本体8cmいせ込み、袖6cm出し修正

代金11000円

◆フェンディーセーター 家庭洗いで伸びて縮んだ?

おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 大友眞吾です。

洗い指定が手洗いになっていたから洗ったところ、本体の幅は縮んでおらず丈が8cmくらい伸び袖が短くなった・・・
そんなご相談です。

LINEでのご相談でしたが、息子健也から画像を見せられ、「これどう思う?」っと相談を受けました(笑)

手洗いでニットの丈が伸びてしまうのはよくあるんです。
洗濯の指定表示、上の段の一番左が手洗いマーク、左から4番目の▢に横棒のマークが平干し指定マークです。

糸も太く水分を含むと重たくなるため、ハンガーで吊るし干しすると自重で伸びてしまうから平干し指定になっています。

でも、自重で伸びてしまう時、普通は身幅が細くなり下に伸びるんですが・・・身幅は細くなっていないとの事。

画像を見たところ型崩れも起きていない。

経験上、思い込みか勘違いだろ・・・って思いました。

8cmもいせ込めるかどうかは微妙でしたので、できる限りでよければ修正してみます、とお返事をさせていただきました。

そして現物が届いて確認したところ、型崩れもなくちょっと丈が長めのニット。

元々この長さだったんだろうなと、現物を見てもそう思いました。

でも、思い込みでも上半身だけで8cmも伸びたって感じるのも普通はあり得ない。

8cmも伸びれば普通丈のセーターがチュニックくらいの長さになるから違う服ってくらい変わります。

8cmも伸びることは無いだろうけど、伸びたのは確かだろうからできる限りいせ込んでみようという事で修正していきました。

買う時には気が付かない、わからない事例~直すことが出来るんです!~

◆まずは袖の丈出し6cm

全体の風合いからして大きな変化は出ていません。
本体が伸びて袖が縮むって事も通常はあり得ないかな。

元のサイズはわかりませんが、手が長い方もいらっしゃいますので6cm長く修正していますが・・・

本体とのバランスを見ると袖がかなり長くなるため、伸ばす前にお客様へ確認をしています。

6cm程度長くできれば出してほしい、というお返事を頂き、長さを修正しています。

この場合、袖の太さを維持しつつ、丈だけを出していきますが、状態によっては巾を維持して丈出しができないものもあります。

今回はお客様の簿希望通り巾を替えず長さのみ修正ができています。

今回の素材はウールですが、洗濯機で普通に洗濯をし硬くなりながら縮んだ(フエルト化した)ものの場合、巾だし修正ができません。

フエルト化してしまった場合、直すことも伸ばすこともできなくなります。

縮んだニットを大きく!伸びたニットを小さく!

幅出しができるかどうか、どれくらい伸ばせるかの目安

巾だし修正ができるかどうかの目安は・・・

硬くなっておらず軽く引っ張って伸縮する状態であれば巾だし修正ができると予測ができます。

出せる長さはモノにより違いますが、丈の場合は5cm程度くらいが目安かな。

身幅は軽く引っ張って伸びる長さの2倍程度の巾出しができます。

脇下を軽く引っ張って3~4cm伸びるようであればバスト6~8cm程度大きくできます。

元のサイズより大きくすることもできますが、自然な状態より大きくした場合、クリーニングしたり洗ったりすると原寸(自然な状態のサイズ)に戻ります。

全てできるわけではないのであくまでニット製品の巾だし参考目安として考えてください。

◆本体を縮める~いせ込み8cm~

袖を6cm長くした場合、セーターの丈は修正前くらいが普通かな・・・ってくらいのバランスに見えます。

お客様ご希望は8cm短く、です。

測ってみると丈の長さは68cmありますので60cmにすることがご希望サイズです。

どこまで自然な状態でいせ込みができるかはやってみないとわからない・・・

8cmもいせ込めるかどうかも微妙ですが、今のサイズが原寸だとしたら8cmは詰められないかな・・・と思いながらの修復です。

縮み型崩れ直し仕上げ ズボンの膝の伸び・ワンピースの型崩れ直し

この状態を覚えておいてください

修復前のアップ画像です。

縮めると生地が余るので波打つようたるみが出ますが、フェンディーのFデザインが全体的に織り込まれています。

この状態を覚えておいて、修復後の画像と見比べて頂くと・・・

こんなデザインだったんだってことがわかり、身幅が細くならず伸びた理由もわかると思います。

私自身、気が付いた時は「おぉぉぉぉ・・・」って思わず口から驚きというか・・・

40年近くこの仕事をやっていておそらくは初めて出会った修正事例になりました^^

8cm縮めた(いせ込んだ)仕上がり

いせ込みは織りの目を見ながらバランスよく詰めていくため一気に詰めることができません。

今回の場合だと2cm程度を全体の織りで詰めていくよう、バランスよく少しずつつけていきました。

全体にバランスよくたわみを持たせ、目を詰めていき、また少したわませて詰めていく・・・

表面と背中面を同時にバランスを良く少しずつ詰めていせ込んでいきます。

画像、本体と袖部分、よく見てください。

気が付くかな・・・?

◆蘇るデザイン まとめ

風合い、デザインが壊れたとか光沢やぬめり感などがなくなったから直してほしいというご相談がたくさんあります。

でも、新品の時の状態を私は見ていませんのでわからないんです。

今回のこのニットはお客様ご自身で洗われたのですが、相談された内容になることは無い、と思っていましたが・・・

実際に織りの目を詰めながら修復をしていくと・・・

画像を見て気が付くかな・・・?

全体ブランド柄の織りが実は立体デザインになっていたんです。

生地を織る際、縮む糸と縮まない糸を織りこみ凹凸により立体的なデザインを作るふくら織りは時々見かけるのですが、ニットでこうした立体デザイン、この立体デザインが平らになる事で伸びる、といった現象に気が付いたというか実物を見たのは初めての経験でした。

このデザインは同じ糸で織られているのでふくら織りとは違い、立体的に盛り上がっていた部分が平らになったため下に長く伸びてしまった状態です。

横幅はそのままで下に伸びてしまった理由も理解ができました。

デザイン、風合いが壊されたから直してほしいと言ったご相談はたくさんあります。
中には使用劣化ですねって服もありますしこれは無理と判断するものもあり、お受けできないとご説明させていただくものもありますが・・・

実際に修復していくとこういうデザインだったんだって直っていく服ってあるんです。

生地の織りをみて直していく技法を「地直し」と言います。

生地は裁断され縫製されていくから、生地の織りのゆがみを直していけば元通りのデザインに自然と戻っていくんです。

もちろんできないモノもあります。
代表的なのはシルクドレスなどによくあるバイアスかな・・・

一度ゆがめると元通りには直らなくなるため、裁断、縫製前に水にぬれてもゆがみが出ないよう目詰め処理がされていないと1度でデザインが壊れ修復ができなくなるんです。

シルクのネクタイが雨に濡れたり洗ったりするとねじれてしまうのって経験ある方多いんじゃないかな。

ネクタイは解いて地直しをして縫製することで直すことができますのでネットで解体修復をやっているお店に依頼すると直してもらえるんじゃないかな。

当店では今現在はこの修復お受けして言いません・・・

今回のフェンディーセーターはドライクリーニングなら立体的なデザインを壊すことなく洗えると思います。

手洗い可となっていますが、おそらく手洗いすると平干しの際、普通のセーターと同じような感覚で洗って平干しするとデザインが壊れてしまう可能性は大きいと思います。

これ、手洗い可となっているからと業者がそのデザイン性に気が付かずに手洗いしてしまうと形が崩れて大変な事になる可能性は高く・・・

伸びたってクレームになったって何がどうなったかわからないだろうし、見た感じ型崩れしているようにも見えないし、表示の洗い指定に従って洗っているから法律上クリーニング店の過失ではない・・・という見解になるかと思います。

ウールニットなら個人のお店が依頼されれば水洗いして汗取りをするお店多いと思います。

気を付けようがないというか、気が付かないだろうなぁって思う事例でした。


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