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高いコースへの出し分けの注意点~普通に出していれば出なかった不具合~

通常のクリーニングでお受けする場合、縮みから崩れの修復、ウキ直しなどまでは出来ません。
修復は一点手仕上げになりますので修復までご希望の方はご依頼時に必ずご相談ください。

状態により手間も難易度も変わってきますので基本現物を確認をしないとお見積りを出すことが出来ません。

◆ジャケット参考目安価格 

  縮み変形を伴わない立体1点手仕上げ     7700円~

  縮み変形・ウキ直し修復          13200円~

スーツの場合はこの価格に+パンツ、スーツベスト代金となります。

◆良い服だから高いコースへ出したほうが安心か?

おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 大友眞吾です。

ちょっといい服だから、奮発して買った服だから・・・
お金がかかってもちゃんとしたい服ってありますよね。

でも、「高いコースで頼んだのに・・・」と言ったご相談ってとても多いんです。

例えば
・高級素材の高価なコートを高いコースで出したのに毛布のような風合いになった・・・
・手触りがぱさぱさになってしまった・・・
・汚れを落としたい、シミを落としたいと言ったら高いコースを勧められたけど結局落ちなかった・・・
  などなど・・・

今回は「手仕上げするから仕上がりがいいと言われ出したけど・・・」というご相談です。

スーツ2着と3つ揃えスーツをお預かりしたので、修復個所を紹介しながら、どうしてこうなってしまうのかも含めご説明していきます。

画像は同じスーツのビフォーアフターになります。

着て膨らむことで気にならないヨレ、シワもありますが着ても見える部分は気になりますね。

どうしてこうなってしまったか・・・

綺麗に仕上げるってシミ抜きなんかよりはるかに難しいと思っています。
きちんと直せるお店へ依頼していたのならこのような状態になることは無いはずです。

綺麗に手仕上げが出来る人が居ない店の「手仕上げする高いコース」に依頼してしまったからおかしな状態になってしまったという事なんです。

フェンディーセーター・丈の伸び、袖の丈出し修復~修復すると見えてきたデザイン~

◆襟の凹凸

こちらは同じスーツ、反対側の襟です。

高いコースなど選ばず、普通に依頼していたら実はこの状態にはなっていないんです。

単純に機械仕上げだけなら変なしわ等は付かなかったと思います。

多少生地のたるみなどがあっても着れば人の体が入り膨らむため、気にならない程度で仕上がります。

画像を見ると縫い目が見えますが、この部分は縫い合わせられているので触ると内側の生地の段差が感触でわかります。

アイロンで仕上げる際、この段差が出ないようにアイロンを当てないと段差の凹凸が出てしまいます。

この段差、ちゃんと仕上げられる人に直してもらわないと生地の縫い合わせ部分だけテカリが出てしまい、直らなくなってしまったりします。

そのお店でやり直しをしてもらわず、当店に依頼頂けたのは結果的に良かったと思います。

ジルサンダーシルクブラウス~衿が立体仕立てになっているブラウス

生地が余り見えない部分に寄せている?

こちらは違うスーツ。
画像だとそれほどひどくは見えないかもしれませんがお客様がこれ直りますか・・・?と心配されていた部分です。

お客様にしてみるとこのしわが一番気になっていたようです。

かなりひどく折れシワというか生地が余ったような状態になっています。

着た時に見えないよう余った生地を内側にもっていったのかな・・・?

そんな状態での仕上がりになっています。

芯地の縮みによるシワ

こちらも内側ですが、パッと見て芯地の縮みによりしわができているとわかる状態です・・・

どう手仕上げしているのかはわかりませんが機械仕上げ以外の事をしてシワを伸ばそうと思った結果、シワになってしまった状態。

機械仕上げだけの場合、多少芯地が縮んでもちょっと生地にぶく付きが出る程度で納まります。

芯地の縮みが出ていなければもしかすると綺麗に仕上がっていたのかもしれませんが・・・

仕上げた人はどうしてこの状態になるのかって事がわかっていないですね。

分かっていれば対応して直せるのでは?と思います。

◆機械仕上げでは伸びない素材 スーツベストの裏地

こちらは三つ組みのスーツベストです。

座った時に付く強い折れシワは機械仕上げでは伸びないんです。

特にキュプラが使われていると伸びにくく仕上げも難しくなります。

アイロンで普通に仕上げてしまうとベストの裏地はテカリが出やすくまともにアイロンを当てられないんです。

綺麗に仕上げようと思うとベストって結構手間がかかるんです。

一点ずつ当て布を使いながら手仕上げしていきます。

クリーニングに出しても背中のしわが伸びてないって経験、ある方も多いのでは?

椅子に座って仕事する時間が長い方はベストは脱いだほうが無難です。

いいスーツのほとんどは裏地にキュプラが使われますので強い折れシワが付くと綺麗に伸ばせなくなってしまいます。

気泡のような浮き?今回の事例は芯地の縮みです。~浮きと縮みでの出方の違い~

内側ポケットの秘密

内側だし見えないから気にしないって方も多いようですが・・・
実はこのポケットには綺麗に仕上げるための秘密が隠されています(笑)

内ポケットが付いている部分の内側には芯地が入っています。
芯地が縮むとポケットは湾曲したりなど、スーツの状態がわかる部分です。

仕立て上がりは表裏とも生地が余ったりダブ付いたりしていることは無いんです。
ポケットもきれいに収まっている状態で仕上がっています。

ポケットをなりよく収めるように芯地と表生地のバランスを取りながら仕上げていく事で自然と型崩れも修復できていきます。

ズボンの後ろポケットも同じく、ポケットを留めた状態で自然に仕上がっていれば形はそれほど崩れていないと判断できると思います。

スーツの場合は前下ポケットが湾曲していない、も確認したほうがいいかな。

◆ズボンの線が消えないようにする加工の注意点は?

こちらもかなり気にされていた部分・・・ズボンのラインが3重線・・・
角度でよく見えないけどもう一本うっすらと線が残っています。

お客様ご自身で消そうとアイロンをかけたとの事で、少し焦げてしまったのかちょっと色が変化してしまっています。

シロセット加工とかアルペン加工など色んな呼び名のプリーツ加工がありますが・・・

簡単に言えばこれらの加工は折り目の先端に接着剤を付けて固めて線が消えないようにする加工です。

プリーツ性のある素材はポリエステルだけです。
ポリエステル以外で細いプリーツ、真っすぐの線じゃないプリーツを買ってしまうとプリーツは空気中の湿気を含むだけでも少しずつ取れてしまうんです。

太い付け直しができるプリーツなら取れかかったらつけなおす事ができますが、付け直しができないくらい細いプリーツはポリエステル以外は買ってはダメ・・・

ポリエステルが50%程度混紡されてくるとプリーツはかなり取れにくくなります。


ウールスーツの場合、汗をかいたり雨に濡れたりすると線は消えてしまいますが付け直しができます。

だから、高価なスーツにプリーツ加工をする人はいないんです。

いいスーツにズボンの折り目に接着剤付けて線が取れないように加工する・・・なんてことする人はいないって事です。

プリーツ加工はつける人の技量でも差が出ます。

自分では注意しようが無いですが注意点があります。

一つは仕立て。
股間の真下の縫い合わせ部分を合わせて持ち、裾の縫い合わせ部分を合わせてできるラインが本来の真っすぐのラインになります。

しかし新品時からこの仕立てがずれている服があります。

仕立てがずれている場合、本来の形を取ったラインを真っすぐとると履いた時に歪んだラインになってしまいます。
そのため、新品時と同じラインで付け直してもらわないと履いた時に綺麗な形になりません。

何度かクリーニングに出してラインがずれている場合、きちんと仕立てられているものは本来の形を取ってラインを合わせます。

ウールの場合、元のラインは消すことが出来るので一度消し、ラインを取り直して加工をしていきます。

何点かラインが途中から歪んでいるズボンも見ています。

ラインを揃えたら動かさず真っすぐの状態で付けていくのですが、途中で動かしてしまうと湾曲したりずれたりします。

今回の場合、きっちりと見える2重のラインはプリーツ加工をしてしまったために起きてしまった事例です。

「線が取れない加工しました?」ってお聞きしたところ、「しました!」とのお返事が返ってきています。

本来、ウールならここまでくっきりと前のラインは残らないんです。

つまり、プリーツ加工をしてしまうと加工したラインは消えずに残ってしまうため、このラインにぴったりと合わせてプレスをしてもらえないとラインが2重になってしまうんです。

線が消えてきたり甘くなってきたころにクリーニングして付け直しをすればウールの場合はしわも伸びラインもきれいにつき直します。

多少のずれがあってもウールは前の線が消えるので2重になることは無いんです。

時折プリーツ加工のご相談もありますが、説明をすると加工をするのをやめるお客様がほとんどです。

良いスーツには私自身、全くお勧めはしない加工です。

◆形を修復する立体手仕上げ

色目がかなり違ってしまっていますが同じスーツです。

おかしな線が付く、裏地が余る理由が一番左の画像を見て頂くとわかります。

平らにおいた状態ですが、襟が反り返っています。

これは表側の生地を短く、折り返した時の襟裏側の生地を長くするためこうして反り返った状態になります。

これを立体仕立てといいます。

着た時に自然と表生地が引っ張られ丸みを帯びる襟になる様、立体的に考え裁断縫製されているんです。

綺麗に仕上げる場合、「馬」と呼ぶ仕上げ台の湾曲部分を利用することで表生地と裏地を仕立て通りにぴったりと合わせるようにし仕上げることが出来ます。

立体仕立てされている服はスーツ以外にもたくさんあります。
シンプルな女性ブラウスの襟などでもハイブランド品は着た時に柔らかく丸みを帯びた襟となる様な立体的な仕立てになっているって結構あります。

シャネル、エルメス、ジルサンダーなどどうして高額なんだろう?って思うほどシンプルに見えたりしますが、着た時のシルエットが全然違うんです。

なんとなく買った時と違う感じになっているって思われている方からご相談をお受けしたりしていますが、ほとんどの人は気が付かない・・・かな。

デザインが一度壊れてしまうと元通りに直せない事もあります。

しみ抜きって少し勉強すれば出来るようになる技術ですが、仕上げはそうはいかないんです。

生地の目を見て直す「地直し」を継承されている方がどれくらいいるかな・・・?ってくらい少なくなっています。

【縮み変形などが出ていないスーツのアパレル仕上げ】と言われる仕上げと
【縮み修復を地直ししながら修復する仕上げ】では地直しをしていく方が難易度が格段に高くなります。



◆高いコースへの出し分け 注意点 まとめ

【一流になりたかったら一流のものを食え!】昔、言われた言葉です。

「食べた事がないものはわからないだろ?」そんな意味合いで言われた言葉でした。

誰かの言葉のパクリなのかどうかはわかりませんが。

食べるものに例えていますが、クリーニングでも同じで、本当にいい仕上げ、いい仕事を見たこと無ければ「いい仕上げ」がどんなものかわからないんです。

立体的なデザイン、人が着て体が入った時に作られるデザイン。

同じように、しみ抜きも何をどこまでやると限界が来るのかがわからなければ限界までのしみ抜きをすることが出来ないんです。

とりわけチェーン店はパートさんでも綺麗に仕上げることが出来る機械設備をしています。
職人に近い仕事を再現できるように進化をしていますが、機械仕上げしか見たことがないんです。

機械仕上げ以上のことは見たこともないし出来ない・・・
そんな人が手仕上げを・・・出来ない事をやろうとするとどうなる?

そのお店の得意とする仕事を依頼していく事がそのお店の一番良い仕事になるんです。

しみ抜きにしても手仕上げにしても、出来ないのに出来るような宣伝をしてしまうから結果としておかしなことになってしまう。

お客様の服はお客様自身で判断して守るしかないんです。

だから、大丈夫な服は利便性がよいお店へ依頼し、ちゃんとしたお手入れをしたい服は同じ店の高いコースへの出し分け・・・ではなくハイブランド品を得意としているお店へ依頼する。

それぞれが得意とする仕事を、ご自身で出し分けて使う事でより満足のできる仕上がりになっていきます。

洗うだけでは落ちない汚れやシミを落とし、型崩れや縮みが出ている服を織りの目を見て修復しながら仕上げていく。

機械では再現できない仕事をやっていくのが個人店、誰でもできるよう機械化されリーズナブルで利便性の良いお店がチェーン店です。

どちらが技術がある、無いではなく、やろうとしている仕事が違うんです。

だから、お店の得意、不得意を理解し上手に出し分けていく事が大切です。

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