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クリーニングに出しても綺麗にならい、直らない事例 ~SBSキャスター大内菜々子さんからのもう一着のご依頼品~

SBSラジオ【鉄崎幹人のWASABI】から取材のご依頼を頂いた時にキャスターの大内菜々子さんが持って来てくださったもう一点のワンピースです。
一点目はこちら https://clyouyuu.com/archives/7042

毛玉取り、毛羽立ち直しのご相談は良くありますが、クリーニング工程内では取れたり直ったりすることがないんです。

今回も金額は関係なくお受けしているワンピースのため参考価格は無いのですが工程からお見積りすると1万円~1万2千円(税込み11000円~13200円)位になるんじゃないかなと思います。

画像ではカメラで補正がかかるのでよくわかりませんが、部分的にはかなりの毛羽立ちと、その毛羽立ちの先端に黒い毛玉が絡みつくようにありますので、クリーニングだけでは綺麗にできない事例です。

さらに変色も出ており、綺麗にするためには毛玉除去も必要・・・

それともう一つ、今回のワンピースの品質表示から、依頼するクリーニング店により綺麗にしてくれるお店と綺麗にならないお店が出てきます。

その辺りを今回はご説明していきます^^

◆ワンピースの状態・綺麗にしてもらえない理由とは?

おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 大友 眞吾です。

カメラで撮ると補正がかかるため汚れ具合がよく見えませんが・・・
全体的に黒ずんでおり毛羽立ちが起きています。

内側の肌に当たる部分も皮脂汚れがかなり付いています。

パッとみて、しみ抜きではどうしようもない状態のワンピース。

クリーニングだけでは綺麗にできない状態なので、簡単にご説明をし、酷い部分の一部の毛玉と毛羽をその場で落としお見せすると、

「ここだけすごく綺麗になってる!!」とビックリされました。

このワンピースもできる限り綺麗にしていくね、とお預かりしました。

シャネルワンピース 全体カビ黄ばみ変色 しみ抜きの記事はここをクリック

◆クリーニングに依頼する際のアドバイス

ケアラベル(品質表示)について、このブログでも何度かご説明していますが、この表示は服の保証書の役割をしており、
基本的にクリーニング店も指定に従って洗っていく事になります。

服がどう洗えるかはメーカーがどう洗えるように作っているかになります。
水洗いが出来るように作っておらず、水洗いテストでダメになってしまう服を水洗いしたらダメになります。

ある程度作られ方がわかるのがこの表示になるんです。

法的に保証書の役割をしているのは洗い指定です。
表示をご説明すると 素材は表、裏ともポリエステルです。

洗い指定は上段、左から

水洗いは30℃以下のかなりソフトな洗い指定
・30℃以下の水温、洗濯機の一番ソフトな洗いコースで洗えるって事です。

塩素系、酸素系とも漂白✖
・今回は指定以外の事をして綺麗にしています。

タンブル乾燥✖
・今回は自然乾燥させています。

日陰で吊干し
・屋内で自然乾燥させるのが当店の乾燥方法です。

アイロン温度 点が二つ 中温指定(160℃以下)

下段丸に囲まれているマークはクリーニング業者用

ドライクリーニングはソフト洗い可

ウエットクリーニング アンダーバーが2本あるのでかなりソフトに

といった指定になります。

さて、ここでドライクリーニングも水洗いもできるんだ、って思われた方はいいところに気が付いたね!って(笑)

この表示から、この服作りはかなり丁寧に服作りされているなって事がわかるんです。
そして末永く愛用できるように作られているなって事もわかります。

この洗い指定を付ける場合、今回の服はドライクリーニングしても水洗いしても不具合が出ないようメーカーは作り、本当に不具合が出ないかをテスト確認しているって事がわかります。

不具合が出てしまうと法律上メーカーに保証する責任が出てくるため、しっかりした服作りがされているって事がわかるんです。

服作りの情報はこの表示しかありませんので、この表示からある程度の事を予測して読み取っていきます。

では・・・こんな服の場合、どんな洗いするのがよいか・・・をご説明していきます。

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水洗いとドライの両方が洗える服はクリーニング店でどう洗う?

水洗いでは油性汚れが落ちませんので、当店の場合、水洗いで洗い流せるように処理をしてから水で洗い流す、逆にドライクリーニングでは水溶性の汚れが洗い流せないのでドライクリーニングで洗い流せるよう処理をしてから洗う【ハイブリッドクリーニング】をしていきます。

【ハイブリットクリーニング】は当店オリジナルの洗浄方法です。

ハイブリッドクリーニングでは落としきれない場合はドライと水洗い、復元洗いをしていきます。

基本、クリーニング店も洗い方法は品質表示に従って洗っていきますが、今回のように水洗いもドライクリーニングもできる場合はどうするか・・・

そのお店が服を綺麗に洗う事を考えて洗い分けてくれるのかによります。

何も言わずそのまま出してしまうと水洗いではなくドライクリーニングされることが多くなるんです。

何故かというと、ドライクリーニングのほうが早く洗え手間なく仕上げられるからです。

このワンピースもドライクリーニングしかされていないため、この状態になっています。

綺麗に着ていくためのコツ

ではどうしたらいいのか?
それほど汚れが目立つ前に、ドライクリーニングと水洗いを交互にしていく。

受付時に「ケアラベルは水洗いが出来る指定だから水洗いでお願いします」と伝えれば水洗いしてもらえます。
もしくは自分で水洗いをし、時々ドライクリーニングで油性系汚れを落としてもらう。

例えば車の調子が悪くて自動車屋さんに行く時、調子が悪い所を伝えますよね?
身体の調子が悪くてお医者さんに行ったら、何も言わずに診てもらう事ってないですよね?

でも、クリーニングにおいては、洗濯のプロだから何も言わなくても全ての汚れを落としてもらえるって思ってる方が多かったりします。

いくら安価でも取りたいシミが落ちなければ出す意味がないのでは?

してもらいたい仕事をきちんと伝える事が大事なんです。

そしてそのお店が得意とする仕事を依頼する事ができれば満足できる仕事をしてもらえる可能性が高くなります。

服を長く綺麗に使えるようにと考えて洗ってくれるお店って実はとても少ないんです。

◆クリーニングに出しても改善できない事

「クリーニングに出せば毛玉取れますか?」って質問。
クリーニングをあまり利用した事がない若い世代の方から質問されることが多いかな?

クリーニング店の基本的な仕事は洗って仕上げる事です。
【風合いに変化を出すことなく汚れだけを落とし仕上げる】がクリーニング業の定義になっています。

昔と今とではかなり技術も考え方も違っていますが、それでも洗って落ちないシミは取れないし毛玉とか毛羽立ちなども直らないんです。

このワンピースの毛羽立った部分の一部をアップしていますが、新品時は毛羽などなかったワンピースですが、着たり洗ったりしていくうちに生地が擦れながら毛羽立ちが起きてきた状態です。

本体はポリエステル、繊維の中で最も丈夫な繊維です。
丈夫だから生地が擦れても切れることがないので毛羽立ちとして起こってきます。

ポリエステル糸は目に見えている糸の何百分の1という細い糸の集合体です。
糸を束ねてねじるようにして撚り、それをまた束ねて撚って一本の糸を作っています。
1gの重さの糸を伸ばすと9千メートル(1デニール)以上の長さになるような糸なんです。
極細繊維はその100分の1くらいの細さになります。

使ったり擦れたりすることで撚ってある端部分の糸が飛び出しきたり、糸の表面が切れて飛び出してくることで毛羽立ちが起きてきます。

糸の撚りが甘くしてある素材の場合、強く洗われることでも毛羽立ちが起きてきますので洗い方も重要です。

毛羽立ちはドライクリーニングより水洗いのほうが起きやすいかな。
また、タンブル乾燥で熱をかけながら揉まれる事でも起きやすいので、自然乾燥、停止乾燥してもらう事で毛羽立ちを抑えることが出来ます。

今回はさらに毛羽立った先端が汚れながら固まり黒い毛玉になってしまっています。
見た感じで・・・タンブル乾燥をされているなって状態ですが、このワンピースの場合だとタンブル乾燥されるのが普通です。

この状態はクリーニングしようと何しようと、簡単に言えば刈り取らない限り取れる事がないんです。

毛玉取り機で刈り取ったり剃刀でそり落とすようにして取るしかないんです。

今回はほぼ全面、毛玉取りと毛羽立ちを直していますが、すべて手作業。

クリーニングに出しても直してはもらえない事例ですが・・・
ものすごく手間がかかる作業になるので受付時に伝えてもなかなかきれいにはしてもらえない事例となります。

洗うだけでは改善できない黄ばみ変色

今回のワンピースは内側、肌に直接当たる部分は皮脂がかなり残っておりかなり黒ずんでいました。
蓄積させて時間が経つと黒ずみを落としたあと洗っても落ちない黄ばみ変色が残ります。

今回は全体の黒ずんだ汚れ、全体の色合いがかなり黄ばみがかっている状態に見えたのは黄ばみによる変色です。

オフホワイトの色に黄ばみと黒ずみが重なっているためかなり薄汚れた感じに見えていました。

この状態になると、例えば食べこぼしなどシミを付けてしまいしみ抜きをすると、しみ抜きした部分のみ色抜けしたように白くなってしまいます。

実際には色が抜けるわけではなく、新品時の色に近い色が出て綺麗になった状態です。
クイックしみ抜きでお受けする場合、明るい色の服はこの説明をしてからしみ抜きをしています。

部分的に染み抜きをしてそこだけ綺麗になると、同じ強さで全体をやっていくことは出来ないため、色のくすみがひどい場合は【全体の汚れを復元洗いで落としながらシミも落としていく】という作業になります。

全体復元洗いで全体の黄ばみと黒ズミ、しみを落とすようにして綺麗にしています。

しみ抜きで変化を出してしまった後に復元洗いしても均一な色合いにはならないんです。

ポリエステル素材は色落ちしない素材なのでかなり強い酸化剤を使い色合いを復元していますので新品の時に近い色合いに戻っています。

ツートーンくらい明るい色になったと思います。

◆服を綺麗に着るためのアドバイス・クリーニング利用法 まとめ

新品とまではいきませんがかなり近づけることが出来たと思います。
どこまで1点に手間をかけることが出来るかで仕上がりが違ってきます。

クリーニング店って「早くて安い」の利便性を重視したお店が多く、利便性の良いお店が一番と言われています。

安価になればなるほど手間も掛けられなくなりますし品質も金額なりになってしまいます。

断られてしまうほとんどの服は、手間仕事になってしまう状態の服になります。

例えばワンピースのクリーニング代金が1800円とします。洗って仕上げる金額です。

でも綺麗にするためにはドライクリーニングの後に水洗いをしなければいけない場合、2度洗いになるので当店の場合だと+100%(1800円)です。

袖口や首回りなどの蓄積した皮脂汚れを落とすためにしみ抜きが必要な場合、襟と両袖口のシミ抜きで+1500円

黄ばみ変色は普通の洗いでは落ちないので1点に30分~1時間くらいの時間をかけつけおき洗い、つけ置き漂白が必要な場合クリーニング代金の+200%~となります。

毛玉、毛羽取りは状態と範囲、手間のかかり具合で金額が変わります。

手間が一つかかればその分の手間代、技術の対価として代金を頂くことでご依頼された仕事を確実にやっていく事が出来ます。

シミが落ちない、汚れが落ちないというのも、クリーニング代金内で掛けられる手間では落とせないから、なんです。

もちろん技術力も必要です。

事前説明がしっかりできるのも技術です。
技術が無ければちゃんとした説明が出来ないんです。

簡単に見える仕事もたくさんあると思いますが、
この仕事を40年続けてきたからこそ簡単に見えるような仕事が出来るようになっています。
(40年近くやっていたら一般の人が出来ないことできて当たり前かなぁ。。。)

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