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スーツの浮きの原因~購入後4~5年で起きる浮きはクリーニングによる加速劣化~

今回の事例は長年の愛用による劣化ではなくクリーニングによる加速劣化事例です。

接着芯など時間と共に進む自然劣化と加速劣化では状態が全く違います。

クリーニング賠償基準で定められている平均使用年数が2年程度とされているためクリーニング店からは劣化によるものとして説明されてしまう事例です。

ハイブランド品にしてもオーダー品にしても、良いスーツを長く綺麗に愛用したいってお考えの方はこのブログ記事をクリーニングに出す際の参考にして頂けたら、と思います。

浮き直しのご相談は増え続けていますが、自然劣化による浮きではない状態ばかりとなっています。

当店の浮き直しは根本的な解決ではなく
お受けする際できる限り収めながら仕上げますと言った、おまけ的な加工で、ウキが出てこない保証ができるモノではありません。

根本的な直しは芯地の張り替えとなりますが、現在当店では依頼できる職人が居らず受けられません。


1点手仕上げ、縮み修復仕上げ価格参考価格

12000円~18000円(税込み13200円~19800円)

◆ブリオーニ(Brioni)スーツジャケット 自然劣化と加速劣化

おしゃれ工房You友(ゆうゆう) 店主 大友眞吾です。
浮きが出てしまったってご相談がどんどん増えてきています。

最初に気泡のような浮きの修復事例を紹介した時は、接着されているモノが時間と共に自然と劣化して剥がれて来たモノでした。
どんなものでも接着剤で貼り付けてあるものは必ず劣化し剥がれていきます。

この自然劣化による浮きの場合、表生地、貼り付けてある芯地にしても縮んだり変形はしておらず、数十年と愛用しているスーツの場合だとウキは出てくるモノだったので直しながら仕上げていくのをあたりまえとしてやってきていました。

今は不具合が起きたモノだけを依頼される時代となってきたため、手間のかかる仕事は手間のかかる分の代金を頂いていかないと仕事として受けられなくなっています。

特に自然劣化ではなくクリーニング方法による加速劣化したものは接着剤の溶け出し、表生地、芯地、裏地の縮み変形などを伴っており、それぞれの生地をバランスよく修復して合わせながら仕上げていく、とても手間のかかる仕上げとなっています。

自然劣化の場合、縮みはなく、そのままの状態を仕上げていくだけで収めることができます。

加速劣化により縮み変形を伴いながら歪みが出ている場合、今の時代だと直せる職人はとても少なくなっていると思います。

洗いとシミ抜き、仕上げはそれぞれ全く違うスキルが必要で、すべてをできる職人がいる個人店は全盛期から比べるとほぼなくなってしまったと言っても過言ではないくらい少なくなっています。


ジャケット型崩れ修復~ポコポコした気泡のような浮き直し~

加速させる劣化、状態

ご相談をお受けするのは高額のスーツが大半を占めています。
ロロピアーナ、ヒューゴボス、ブリオーニ、グッチ、ダンヒルなどインポート製品が多いかな。

購入後4~5年程度のスーツのご相談が多くなってきていますが、この場合は加速劣化しています。
こんなに早いタイミングで起きる訳がないと思っていたので、メーカーの作り方の問題とも思っていましたが・・・

普段から当店をご利用頂いているお客様のスーツでこんなに早く不具合が出たモノは一点も無いんです。

考えられる原因はドライクリーニングで使う洗剤や洗い方法、または乾燥工程のどちらかになりますが、ほぼ乾燥工程の方法やその温度によるものだと思います。

例えば接着剤で貼り付けているモノを剥がすとき、ドライヤーで温めたりすることで剥がれやすくなります。
熱により樹脂(接着剤)が溶け出すからです。

時間が経っているものは、剥がすとべたべたと溶け出した接着剤が残ります。

クリーニングの工程の中で一番時間がかかるのが乾燥です。
乾燥を早くするために温度を上げると生地や貼り付けてある接着剤はどうなるでしょう?

さらに熱をかけた状態でタンブル乾燥(縦型の回る乾燥)したらどうなる?

結果が画像のような状態です。

このジャケットの状態はまず裏側に貼り付けられている芯地が縮んでいます。
同じ大きさの生地を貼り付けてあり、裏だけが縮むため表の生地が余り凹凸ができます。

凸部分は生地が折れ曲がった先端になるため他の部分と比べると負荷がかかります。
熱処理により接着剤が加速劣化し負荷がかかるため先端だけ剥がれウキのような状態になります。

芯地に縮みと凸部分の先端の剥がれの両方が出ている状態です。

チェーン店の高いコースで出したとの事ですが・・・
こういったことまでをちゃんと理解して洗い仕上げてくれているわけではないんです。

タンブル乾燥が一番傷む工程となるため、高いコースはタンブルしないお店もあります。

この場合、ハンガーに吊るした状態のままボックスに入れ熱風乾燥させますが、接着剤は温度が高すぎても加速劣化していきます。

カシミヤなど高級獣毛は一気に熱乾燥させるとぱさぱさになります。
洗った髪を一気に高温のドライヤーで乾かすとぱさぱさになるのと同じです。

風合い変化、加工剤の劣化を加速させるのが高すぎる熱乾燥、タンブル乾燥です。


ブリオーニ(Brioni)縮み型崩れ、修復仕上げ

波打つようになっている部分です。
剥がれる場所と剥がれていない場所があるため波打ち、先端は浮いています。

この状態を収めるために、いったん表裏の接着を剥がしてから収めていきます。(写真右側)

縮んだ芯地を表生地の大きさに揃えながら貼り付けるようにして修復していきます。

結構ひどい状態・・・

内側の芯地を見るとおそらく接着剤のペタつきが残っていると思います。

アイロンで圧着して接着してることが多いので、自然劣化と違い粘着力がある分、貼りついてくれる・・・かな。


ブリオーニ(Brioni)修復仕上げ②

画像ではわからないと思いますが、アイロンは薄紙一枚程度浮かした状態の浮かしアイロンです。
そして職人技の一つ、お腹で生地が動かないように抑え修復しています。
秘儀…お腹押さえ・・・

表生地は伸ばさず内側の縮んだ芯だけを引っ張るようにしてスチームを当てながら伸ばしながら揃えいます。


ブリオーニ(Brioni)修復仕上げ③

状態により仕上げ方法も使う仕上げ剤(樹脂など)も違うので今回の事例は一例です。

今回は形状記憶樹脂を入れています。

形状記憶樹脂を付けたらスチームでよく蒸し熱をかけ繊維に浸透させます。

通常の手仕上げの場合、光沢と表面のハリが出るサイジング加工剤を入れながら仕上げていきます。


ブリオーニ(Brioni)修復仕上げ④

色の濃い服はアイロンをかけるとテカリが出てしまいます。
出ないように浮かしアイロン、当て布など使いながら仕上げていきますが・・・

縮み変形など直す場合、アイロンである程度抑えながら仕上げていく事になるためテカリを出さないように仕上げるのってかなり難しくなります。

当て布は素材と生地の厚さにより変わるのでいろんな厚さの生地を買い試し掛けしながら今に至っています。

当て布一枚でテカリの出具合と仕上がりが変わるって事に気が付いたのは20年くらい前かな・・・


◆ブリオーニ(Brioni)修復仕上がり

まずは半面だけ仕上げた画像です。前立てに貼り付けられている芯地全体が縮んでいたので着ようと思った時かなり驚いたんじゃないかな・・・

接着(ボンディング加工)はクリーニング賠償基準で見ると平均使用年数が2年、倍の4年も経過しているといつ劣化寿命が来てもおかしくない時間経過とされています。

なので最近はこの基準を説明することにより弁償等、補償を避けられるという事で4年経過している服は服の寿命です、と簡単に言われるようになってきました。

一番問題なのは、4年経ったらダメになっても当たり前のモノとして扱われてしまう事。

だめにならないように扱い寿命が来てしまったものと、加速させても4年も持てば大丈夫とするのとでは全く違います。

クリーニングも時代と共にどんどん変わってきていますので、利用する側もどう利用していくかを考える時が来ていると思います。


合成皮革付きダウンコートクリーニング ~しまって置くだけでも使えなくなる経時劣化~

ブリオーニ(Brioni)修復仕上がり②

before&afterを簡単に見ていきます。

縫い目付近の縮みなどは着て人の体が中に入ると張られるため気にならなくなったりもしますが・・・ぼこぼことした凹凸が出ていたら着られません。

良いスーツを着る意味もなくなります。


ブリオーニ(Brioni)修復仕上がり③

画像で見るより実物は結構ボコボコした状態。
スーツは着たときのシルエットも大事ですね。

浜松に英国屋があったころ、店長さんを含め何度もお客様の服を持ってご来店くださっていました。
店長さんは自社の服の金額と品質ってどう?など相談に来られたこともありました。

一番最初にご来店くださった時に着ていたスーツを見て、この人は何者・・・?って思ったのを覚えています。
良いスーツって着た姿を見るだけで良いスーツだなってわかるんです。


ブリオーニ(Brioni)修復仕上がり④

なぜか、左側の縮み型崩れの出方が酷かったんです。

何かがあって前処理剤を吹き付けて洗ったのかな・・・?

前処理剤というのは、ドライクリーニングでは落ちない水溶性のシミとか汚れがあった時に、ドライクリーニングでも落ちやすくなるようスプレーしてから洗うしみ抜き剤。

これは使って大丈夫なモノとダメなモノがあります。
単純に洗剤成分を吹き付けて洗うため、縮みやすい服やデリケート素材、水を付着させるだけでシミになる素材や高額品には使わないほうが良いモノ。

何をされているかわからないのは今も昔も変わらないのがクリーニングの仕事ですね。

「浮きをできる限り収めていく」とお受けするしかないのですが、内側の不具合を解かず表から直していくため、状態により綺麗に収められるモノと収めきれないモノがあります。


◆ブリオーニ(Brioni)修復仕上げ まとめ

お客様からスーツの仕上げについて聞かれる事ってよくあります。
立体裁断、仕立てられている衿、クリーニング店による仕上げ方法の違い等々。

「今まで利用していたクリーニングで不満が何もない場合、余分な事は知らないほうが幸せだよ」って答えたりもしています。

その理由として仕上がり画像を見比べてみてください。
パーツごとに見ていくとあれほどひどかったのに、こうしてトルソーに着せてしまうと中に人の体が入るのと同じように生地が張られるためぱっと見ではそれほどひどい状態とは見えないと思います。

クリーニングから帰ってきたら襟がヨレている、変なところが折れ曲がっているなどのクレームって結構出ているようですが、中には型崩れは起きていないものもあり、そんな服のご相談に来られたお客様には、一度着て姿見(鏡)で見てください、と着て頂くと・・・

ほんとだ・・・って納得されたお客様って結構いらっしゃるんです。

体が入った状態で綺麗に見えるように仕立てられている場合、吊るしてある状態だと不格好に見えるものもあります。

クリーニング店から型崩れのクレームになったと相談があった時も、お客様に着てもらい見て頂くと納得してもらえるとアドバイスをし収まったこともあります。

最近増えてきている一番厄介なのが高いコースへ依頼しての不具合のご相談。
普通に依頼した場合の仕上げってほとんどが機械仕上げ。スチームを当てて仕上げるだけ。

仕上げ段階では預けた状態よりしわ等も伸びた状態で帰ってきます。

高いコースの場合、さらに一点機械仕上げや、アイロン仕上げが入ったりします。

下手に1点ずつ機械仕上げとかアイロンが当てられてると・・・直すのが大変なくらい型崩れを起こしたりテカリが出たりなど不具合が起きてきます。

ファミレスで一流レストランと同じ味を作れって言われてもできるわけないって誰もが思われると思います。
これは、クリーニングでも同じです。

今の時代、チェーン店も人件費も上がれば材料などコストも短期間で驚くほど高くなったため安いクリーニングではなくなりつつあります。

高いコースへ出されたお客様からお話しを聞くと、当店のほうが安いと言われることもしばしば・・・

利便性だけじゃなくクリーニングも上手に使い分けていく事が必要な時代です。


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